中国の歴史で面白い、とよく言われるのが魏・呉・蜀の三国時代の歴史の話である『三国志』が思い浮かぶと思う。

三国志は多くの作品を生んだし、漫画化もされている。読んだことのある人も多いだろう。

三国志は知っているし、歴史漫画が好きだという人はもう読んだこともあるかもしれないが、まだ手に取っていないならばぜひこの記事で紹介する作品を読んでみてほしい。

今回紹介したい作品はその三国志よりも前の時代である春秋戦国時代をモチーフにした『キングダム』(原泰久)だ。

キングダムは2006年から連載をスタートし、今なお連載中で、私が続きを一番待ち望んでいると言ってもいい作品だ。

この物語の概要は中国の春秋戦国時代を背景に大将軍を目指す少年、信と後に始皇帝となる政を中心とした動乱の世界を描いている。

熱い!暑い!作品の全てが熱い!

なんといっても物語を通して伝わる熱さが凄まじい、とにかく迫力がすごい。

史記を基に脚色したと言えど歴史漫画、という言い方をすると堅く聞こえてしまいがちだがそんなことは全く感じさせない。

実際に歴史上で起きた事件やその最中をバランス良く脚色し描いているのだが、この作品はとにかく凄まじい迫力がある。

そして登場人物達の魅力にも注目したい。

もちろん戦国時代であるために出てくる登場人物はみな筋骨隆々のむさ苦しいおっさんばかりである。

だが、戦乱を生き抜く将軍達の生き様や、それぞれ持っている美学がとにかくカッコイイのだ。

これほどまでにカッコイイおっさん達を描いている作品は他にないのではないだろうか。

三国志などでは武将の名前をよく聞くし、逸話などもいくつか覚えているが、春秋時代はというと武将の名前など読み始めは誰一人知らなかった。

読み終わってから私はすぐにそれぞれの武将のことを調べていた、それほどに登場人物が魅力的に描かれているのだ。

おっさんの話ばっかりじゃねーか、という人も安心して欲しい。

かわいらしいヒロインもちゃんと登場する。

物語の雰囲気を壊さないようにうまく絡んでくるのだが、そのバランスもちょうどいい。

息が詰まるような物語に少し華を添えるような感じだ。主人公と今後どうなるのか気になるところでもある。

そしてその登場人物達をひっくるめた勢力争い、政治的な駆け引きなどもこれまた熱く、面白い。

そんな将軍達を相手に少年である信は立ち向かっていくわけなのであるが、最近の作品に見られるような小柄な少年少女が大柄の男をばったばったとなぎ倒す……というコンセプトではこの作品はもちろんない。

最初は大将軍の夢を持って小さな隊の隊長から、そして段々と大きな隊の将として成り上がっていく、夢へと向かい着実に主人公達が成長していく様には心が躍る。

友情・努力・勝利をここまで熱く、美しく描いている作品はないだろう。

歴史という大きなストーリーをバックに展開される物語にはそのスケールに見合うだけの熱量を持っている。

上でも述べた通り、歴史漫画特有の堅苦しさは一切ない。

この作品を読み終わった頃にはきっと胸が熱くなることだろう。