日本では日本古来のものとして多くの妖怪にまつわる作品が産み出されてきた。

今回紹介したいのは、おどろおどろしい妖怪たちと王道的少年漫画。

それゆえに非常に熱く、感動させられ、心をくすぐられる『うしおととら』(藤田和日郎)を紹介したい。

この作者が描く少年漫画は熱いものが多い『からくりサーカス』や『月光条例』もぜひ手に取っていただきたい。

冒険に次ぐ冒険!これぞ少年漫画だ!

やはり少年漫画と言えば冒険すべきである。

そして立ち向かってくる敵を倒し、さらに冒険を続けるべきである。

この『うしおととら』はまさしくそんな冒険劇である。

最近はなぜか敬遠されがちな気もする王道的展開というのはなかなかどうして面白い。

やはり、面白いからこそ昔から多くの作品で展開が似て、それが王道と呼ばれる様になったわけで、理屈抜きで面白いのだ。

そしてそのなかの話には時には泣けるような話もあれば熱い話もある。

いろいろな妖怪達との出会いや闘いなどが描かれるのだが、全てが必要な話だったと思わされるような終盤は必見である。

とにかくスケールもでかければ、主人公達も格好いい!読み応えある漫画である。

こういった少年漫画と言えばやはり悪役は重要である。

最終的に倒すべき敵が序盤や中盤から明確化して、そのボスを倒すために主人公達が奔走するわけである。

その物語の終着点とも言えるボスがなんとも弱そうだったり、かっこよくなかったりすると読者としてはテンションが下がるわけである。

やはり絶望感が漂っていないとお話としても読者としても盛り上がらないわけである。

その点、この作品のラスボス感は怖すぎである。しかも勝てる気がしない。

ここまで邪悪そうな悪役もなかなか見ないぐらいで、読者に圧倒的な絶望感をお届けしてくれる。

少年漫画だが妖怪というホラーテーマなためか割と凄惨なシーンも出てくるわけだが、それがまたこの作品に少しダークさを落としていて良い。

登場する妖怪もみなそれぞれにコワさがあってこれまた良い。

そしてストーリーの構成なのだが、本当に終盤に全てを持って行かれる。

物語が終盤に差し掛かり、さあいよいよ。というような雰囲気になってきた時の物語の盛り上がり方は本当に圧巻の一言。

熱い!本当に熱い。とんでもない熱量と気迫を感じる。

今までに散りばめられていた伏線があれよあれよと回収され、加速する様には心を鷲掴みにされる。

そして目頭が熱くなる感動的なシーンも多い。大人になっても間違いなくグッとくるはず。

本当にこの物語の終わりに差し掛かった時、その熱さと深さに感動すること間違いなしだ。

今は寂しいことにこういった王道的で、そして良い意味で暑苦しい漫画は少なくなってしまったように思う。

ぜひ多くの人に全巻を通して読んでみてもらいたいし、今の少年達にも読んでもらいたい作品である。