今回紹介する漫画のタイトルは永井豪、『デビルマン』である。

この作品のタイトルを聞いて知らない人はほとんどいないだろう。

アニメの人気などは凄まじいものだったし、最近実写映画化されている。(この映画についてはおすすめはしない)

さて、テレビアニメ版デビルマンのストーリーと言えばどのような話が思い浮かぶだろうか。

主人公『不動明』がダークヒーロー『デビルマン』として変身し人間界を滅ぼそうとする悪い悪魔達を倒す勧善懲悪もの……そんな印象ではないだろうか。

しかし、漫画『デビルマン』はアニメとは全く違うホラー要素の強いストーリーとなっている。

長く語り継がれる『名作』にして『原点』

絶望系と評して語られることの多い作品は多くあるが、この『デビルマン』がなければその作品たちの多くは世に生まれなかったことだろう。

それほどまでに『デビルマン』は多くの漫画や作品に影響を与えたし、ショッキングなものだった。

私がこの作品を読んだのは割と最近のことだが、子ども時代に読まなくて良かったと思った。

この作品をおすすめするが、小さい子どもには少し刺激が強すぎるかもしれないので注意してほしい。

それほどまでにこの『デビルマン』は衝撃的に『人間の物語』を描いている。

作中に見えるエログロさとリアルさもこの作品の大事な要素だ。

『デビルマン』はとてもバイオレンスなシーンが多い。とは言っても漫画でデフォルメされているので極めて不快だというわけではない。

さて、物語中盤において人々は悪魔(作中ではデーモンと呼ばれる)達を恐れるがあまりデーモン狩りを決行する。

これは中世において行われた魔女狩りととても類似しており、モチーフにもなったのだろう。

それはまぁいい、とにかくここの描写がとんでもなくリアルなのだ。

人間が人間をデーモンと疑い、残酷にも疑わしい者を処刑する。

人々を駆り立てる狂気が恐怖としてこちらに伝わってくる。

そして、そのデーモン狩りの結末として『デビルマン』を読んだ多くの人々にトラウマを植え付けたシーンに繋がる。

その問題シーンの見開きを見たときに私は無意識に「えっ」と声が出た。

この作品の肝は壮大な物語の原点とも言うべき濃密なストーリーである。

上で挙げたようにグロテスクなシーンが多いのは事実ではあるが、主人公・不動明や対立する飛鳥了などの観点から優しさや弱い者達の視点が集約されている。

全5巻という短い巻数にまとめられたこの作品は確かに私の心を撃った。

昨今の漫画に見受けられる商業的な意味での引き伸ばしのために入れられるような無駄なストーリーは一切ない。

全5巻からなる『デビルマン』には読後本当に自分は5巻しか読んでいないのか?と思わせるような濃密な物語があった。

今読むと古さを感じるような描写も見受けられるが、それでも色褪せない名作とはこの作品のようなことを言うのだろう。

物語上の表現方法が読者を選ぶかもしれないが、それでもこの今なお多くの漫画に影響を与え続けるこの名作をぜひ読んでほしい。