つい最近『暗殺教室』が映画化されて反響を呼んでいたが皆さんはご覧になっただろうか。

『殺せんせー』の見た目が衝撃的(しかも簡素)なので広告などで目にしたことがある人は頭の片隅に残っていると思う。

今回紹介したい漫画は『暗殺教室』で話題の作者・松井優征の『魔人探偵脳噛ネウロ』である。

犯人の顔芸を始めとした独特の絵と物語がすごい

この作品は探偵と名のついているものの推理物の皮を被った単純娯楽漫画と作者が記述しているように、推理に重きは置かれていない。

代わりに犯人を暴き出す理不尽的すぎる特殊な能力であるとか、暴かれた後の犯人の反応に大きな特徴がある。

強烈な個性となんだかちょっとわかるような、いややっぱりわからないような美学を振りかざす作中の犯罪者達には驚かずにはいられない。

また、それが面白くもあるのだ。

一方で絵が雑だとよく言われているが、読み進めるうちにむしろだんだんと癖になってくる絵柄である。

正直に言うと私も絵が最初受け付けなかった。

雑、というか「なんだこれは」そんな感じだったのだが「絵柄など内容の面白さに関係ない」という大事な事に気付かせてくれた作品だった。

そしてもう一度言うが読んでいくと味が出てくる(はず)なので、絵で敬遠はしないでいただきたい。

その独創的で絵画的とも言える絵のおかげでこの作品の雰囲気が出てきているので、良いアクセントだと私は思うようになった。

もっとも背景などを見ると画力はあることはわかるのだが。

単純な物語の内容の面白さで勝負している作品である。

計算され尽くした物語の構成が本当に素晴らしいのだ。

この作品の面白さは、ブラック感溢れるパロディや、所々に挟まれるギャグなどの小ネタにもあるのだが、なんと言っても全体的な物語が面白い。

犯罪者達が犯す殺人事件などの推理はあまり読者にはさせてくれないものの、物語自体を進める細かな伏線が各エピソードに散りばめられている。

それが繋がっていく様には感動すら覚えるほどである。

ここまで練り上げられた完璧なストーリーは本当に珍しいと思う。

薄く引き伸ばされることもなく、詰めすぎて駆け足になることもなく本当に丁度いい塩梅である。

少年漫画は大抵引き伸ばされたり打ち切られたり、とするものだがこの作品は終わるべきところできちんと終わらせることができた数少ない少年漫画かもしれない。

全てのピースがあるべきところに収まるパズルのように緻密に計算されたストーリーは終盤へ向かうほどに加速していく。

そして少年漫画的王道を行く熱い展開などもきちんと抑えていて熱くなれる。

キャラクターの魅力は言わずもがな、主要キャラから上で書いた通り犯罪者達まで個性的で魅力的である。

この作品はぜひとも全巻を通して読んでいただきたい。

読み終えた時に清々しい気持ちを味わえるほどに筋の通ったストーリーとなっていて、本当に味わい深い作品である。