夏休みの時期になると私は毎年、朝にやっている『幽遊白書』の再放送がとても楽しみだった。

何度も何度も見ていたことをよく覚えている。

この作者が描く漫画はとても躍動感に溢れていて、大胆で繊細で面白い。

現在も連載中の『ハンター×ハンター』の続きもとても待ち遠しいが休載が多いことは有名で作者の身体も漫画の行方も心配である。

今なお面白い少年漫画を描き続ける冨樫義博作品の中でもおすすめしたいのが『レベルE』(冨樫義博)である。

天才的とも言えるセンスが光るSFミステリー

この作品は全3巻の短編形式のSF漫画である。

地球に潜んでいる宇宙人がトラブルを起こし、それを主人公である宇宙人の『バカ王子』が解決していくというストーリーである。

というよりバカ王子がトラブルを起こすと言った方が正しいかもしれない。

(バカバカと言っているが、バカ王子は名前であって作中では天才という設定である。)

SF作品なのだが、妙にギャグが面白い。厳密にはオカルトコメディ、SFコメディといったところだろうか。

しかし、ただコメディというわけではなくそれぞれのエピソードがストーリーとして面白いのだ。

意外性のあるオチや、話を崩しているのに説得力があるところなどに作者の力量を感じさせる。

なんとも高度なギャグ漫画である。

そして今の連載では中々お目にかかれない(?)冨樫義博先生の丁寧が絵が見れる。

『ハンター×ハンター』などはとても絵が雑(というか下書きのまま掲載されている部分が目立つ)ということでネタになったりしている。

しかし、この作者実際はかなり絵が上手いのだ。躍動感のある動きの表現では少年漫画でも1、2を争うと私は思うし、

正確なデッサン力に関しても非の付け所がないほどに綺麗な絵を描く。

この『レベルE』に関しては当時月一連載だったこともあって非常に絵が丁寧である。

そのため漫画的絵がかなり上手いなぁ、と思わされる。雑な絵なイメージを持っている方には読んでみて欲しい。

そしてこの作品はとても読みやすい、全編通して読むのに時間はかからないのだ。

何故なら上述の通り全3巻(文庫版では全2巻)と少年漫画誌で連載していたにしてはかなり短めである。

その中にSF、サスペンス、ミステリー、オカルト、コメディとてんで様々なジャンルが混ざり合っているのだから驚きである。

普通ならごちゃごちゃしてしまいそうなものであるが、そこはやはり作者のセンスと手腕が光っている。

なんとも絶妙なバランスで成り立っていて作品として壊れていない。

いつでも読者の想像の斜め上を行き、飽きさせない魅力を持つ主人公・バカ王子のキャラクターはかなり強烈である。

少年漫画には「天才キャラ」というのが大抵いて、その大体は安っぽいものだったりする。

しかしその点この作者は流石である。大変上手く魅力的に「天才」を扱っており、感心させられる。

全体を通して作者の趣味が良い具合に炸裂した作品であるが、まとまっていて短く読みやすいので長編を読むのが疲れる、なんて人にもおすすめする。