たまにではあるが、私は美術館に行きたくなる。

私は芸術にはとても疎いので結局は行かないのだが、行きたくなる。

何故だかはわからないけれど、神秘的な雰囲気を感じたくなるのだ。

この記事をご覧のあなたにもふとした時にそんなことを思うことはないだろうか?

今回紹介したい漫画は現在も絶賛連載中である森薫の『乙嫁語り』(読みはおとよめがたり)である。

この作品は2014年にマンガ大賞で大賞を受賞しており、その名を聞いたことのある人も多いのではないだろうか。

緻密で繊細な確かな画力で描かれる世界観はまさに芸術

この作品、とんでもなく描写が細かく描き込まれている。

作中の小道具、登場人物の衣装から風景に至るまでとんでもなく細かく繊細に描き込まれているのだ。

その描き込み具合をまず一読していただきたい。

作中で登場人物達が身に纏う衣装の美しさなど、目を奪われる程である。

全体を通しても本当に尋常ではない描き込みっぷりに驚きっぱなしだ。

私はページをめくる度にその綺麗な風景や装飾品などに驚きと感動でニヤけてしまったほどだ。

何よりすごいと感じるのはそれほどに凄まじい描きこみなのにクドく感じてしまったり鬱陶しく感じることなく、ただただ華やかなのである。

編み物などをしているシーンなど、神秘的な刺繍の模様と相まって、神秘的で素敵だとしか言いようがない。

連載漫画でこの尋常ではない描き込みっぷりは変態的(良い意味で)だとも言える程に凄まじいものであると思う。

しかも神秘感は作中の背景設定からも来ている。

作中の舞台は19世紀後半から20世紀前半程の中央アジア。

日本には馴染みが薄く、どのように暮らしているかなど覚えがないはずである。

そのためか美しく描かれる異国の地の風景はすごく想像が掻き立てられる。

そこに住まう人々、遊牧民達の生活風景などが描かれているのだが、なんとも素敵な異国情緒ある雰囲気である。

とてもロマンチックな歴史ファンタジー物である。

日本には馴染みのない生活様式や共通意識、それらも突飛に感じずに素直に受け入れられる。

本当に綺麗な絵と相まってうっとりするような雰囲気がこの作品を包んでいる。

そして物語の簡単なあらすじなのだが、最初からクライマックスである。

この物語の第一話で物語の中心となるアミルとカルルクはアミルがカルルク(12歳)に嫁いでくる形で結婚する。

結婚に至るまでのなんやかんやはとりあえずそこになく、第一話で新婚さんとなるのである。

そして結婚してからの生活やら、部族の対立などなどが描かれるわけである。

そして他にも語られるまた違った登場人物達の嫁入りの物語。

そのどれもが素敵で心温まる話であり、それぞれの登場人物に魅力も感じられる。

芸術的なまでに洗練された異国の風景とそこに登場する人物達には憧れに似た幻想的な想いを抱かせてくれる。

何か綺麗なものを見たくなったらこの作品を手に取って神秘的な異国の香りを感じとって欲しい。