歴史物漫画というのは読んでいるとその時代の価値観と現代の価値観の違いなどが描かれていてその違いがとても面白い。

今回紹介する『ヴィンランド・サガ』(幸村誠)は11世紀初頭、当時世界で暴れまわっていたヴァイキング達を描く歴史漫画である。

史実をもとにしたフィクション!歴史は面白い!

この作品は史実に沿い、実在した登場人物達が多く登場するが、作品を面白くするため脚色が加えられている。

だが、それでも実際の人物を描くことでこの作品に歴史漫画としての重みを落としている。

そして、その時代の人々とその生き様をヴァイキングの視点から描き出している。

ヴァイキングという言葉は中々聞きなれない言葉ではあるが、それでも不思議とうまく物語は理解できる。

王室、貴族、平民、奴隷、そしてヴァイキング、それぞれの生活での苦しみや考えをごちゃごちゃさせずうまく描き出している点は流石としか言いようがない。

時には明るい部分だけではなく、負の側面をきちんと描き出しているが、それもまたリアリティがある。

だが決して重く暗いだけでなく、男らしいヴァイキング達の生き様にはスカッと爽快感を覚えるはずである。

特徴は圧倒的な画力!キャラクターにメリハリがあってしかも丁寧だ。

歴史漫画というのは登場人物がどうしても多くなりがちである。そして、なんとも実に覚えづらいものである。

だがこの作品はその高い画力でメリハリのついた丁寧な描き分けでわかりやすい。

そしてその高い画力で描かれる戦争などの戦闘シーンの迫力も凄まじい。

登場するキャラクターたちは絵の上手さとコマ割りの上手さが相まって躍動感溢れる動きを描き出している。

背景に至っても実に丁寧に描かれており、少し哀愁を漂わせる雰囲気は本当に素晴らしいものである。

緻密で重厚感のある描き込みはこの作品の魅力のひとつだ。その重厚感はこの物語にさらに深みを与えているのである。

圧倒的な男臭さ!でもそこがいい

さて、この作品の登場人物達は大変男臭い。

お世辞にも小奇麗とは言えず、野蛮で、単純で、なんとも暑苦しいのであるが、そこがまたいいのである。

男ならば間違いなく熱くなれるはずである。

ただし、凄惨を極めるシーンや、現代でいう倫理観に欠けたシーンなども多く登場するのだが、それはこの作品の時代背景を如実に表していると言える。

非常に作品内の人の生死が軽い点などは現代社会に生きる私達からすれば驚きであるが、

それでもこの作品の登場人物は明確な目的を持って生きている。そこがある種の清々しさを生み出している。

練りに練られたテーマ、登場人物、時代背景とすべてのものが相まって格好いい作品である。

カッコイイというより格好いいという言葉が相応しい。そんな作品である。

現在もまだ連載中であるのでこの機会に読み進めてみて欲しい。